あらすじ
香坂陽々の魔法が消え、悪役は姿を消した。悪者はいない。
しかし、世界はまだもとの姿を取り戻せていなかった。
五年前に契約獣マインと出会い、魔法を手に入れた少年、伊月明。
彼は当時、自らを女性だと思い込んでいた。
「女の子が欲しかった」という理由で母親にそう思い込まされていた。
しかし、人は成長する。 嫌でも「性」を理解する。
「自分が男に生まれてきた所為で、親が悲しい思いをした」
「自分が関わった人間すべてを騙してしまった」
「自分が悪い」
「自分が悪い」
「自分が悪い」
被害妄想は拡大し、いつしか他人すべてが自分を責めていると感じるようになる。
だから明は魔法を使った。
世界に悲しいことなんてない。
弱い自分はいらない。
明の魔法は、現実逃避。
かなしいことはすべて、みえないようにかくして、なかったことにしてしまう。
そんな生き方をしていては、成長などできるはずもないのに。